ニクロム線をカールさせる・・・

久々の修理ものの記事です。インフルの後遺症で・・・というか、まだウイルスをキャリアしている可能性もあるのであまり外へ出られず話題が無い(笑)。まあ、この作業自体はずいぶん前に行なっていてストックされていた話題なんですがね。

↑なんともマニアックな道具であります。分類的には「暗室用具」と呼ばれるものらしいです。暗室=現像の際に液温が下がりすぎると狙った効果がでない・・・化学反応だもんね!そのための保温装置です。まあ、ホットプレートと考えればいいんでしょうか?

表示されているメーカーを調べてもHPが出てこない・・・。以前修理を依頼したら「もう出来ない」と断られたそうです。近所の電気屋さんに頼んで直してもらったら温度が高くなりすぎて使えない・・・とのこと。うーん?かなりシビアな機械なのか?手に負えるかな?気分的には確率1/2で無理かな・・・というかんじ。

↑開けてビックリ!うわぁ、何ちゅうシンプルな作り・・・カールしたニクロム線をガイシ?素焼きっぽい絶縁体で支えてあるだけ。この線が経年劣化で焼き切れただけでした。ちなみに写真は修理後のものであります。

↑温度調節はこれまたアナログなバイメタルです。

バイ=2つの、メタル=金属・・・という意味で、要するに薄い2枚の金属を張り合わせた板が接点の間に入ってまして、2枚=2種類の金属なので温度による膨張率が違うんですね。片方が良く膨張し、片方があまり膨張しない・・・この膨張率の差で金属板が曲がって動くんですね。するとスイッチOFF。冷えると真っ直ぐにバイメタルが伸びてスイッチON。なんともシンプルですよね(この説明で理解できたかな?無理か(笑))。

電気屋さんに出して「熱くなりすぎるようになった」のは多分、ニクロム線の「太さ」「長さ」の選択を誤った・・・と見ました。線が細い場合と、線が短い場合に発熱が大きくなるだろうなぁ、と見当。

ただし、太さをどう調べるか・・・これが問題。以前、ミシンのフットスイッチのバネを直したときはバネ屋さんに破損品を送って「同じものを作ってちょ~」作戦が出来たんですが、HPを見た限りでは「ニクロム線屋さん」はないみたいだ(有るわけ無いな(笑))。

・・・で困った時の親頼み!実家の工場へ行き「マイクロメータでこれ測ってちょ~」作戦でこれを切り抜けることにしました。ちなみに「工場」は「こうば」と読みます(笑)。兄弟3人でやっている「超零細有限会社」ですね。雰囲気としてはSF映画ブレードランナーで出てきた謎の東洋人でロイバディに「わたし、お前の目作ったょ!」のシーンを思い出させる機械いっぱいの部屋(どんなだろうね?)~へ行き、古い古い(僕の祖父が使ってた)道具を引っ張りしてもらいました。

↑こんなやつね。・・・で結果は0.35mmと判明!めでたし。

あとは、長さ・・・。これは断線したニクロム線を少し引っ張って伸ばし、コイル1巻きあたりの長さを測り、さらにコイルの数を数えて積を出しました。おおむね450cm強といったところ。

ネット上で調べたら0.35mmのニクロム線が5mで1150円で売られておりました。本来ならもっと細かい規格があるんでしょうが、調べようが無いのでとりあえずこれを購入。

カール=コイル状にするのは見たところ鉛筆ぐらいの太さだな・・・と見当をつけて地道に5mを鉛筆に「グリグリ」と巻きました。勘でやった割には同じように出来て感動!ちょっと6角形ぽいカールになりましたけどね(笑)。・・・で、とりあえず5mでセットして動作させて、少しづつ短く切ろう・・・という作戦に出ることに。

↑なので余分な長さがあるのでU字型にコイルが逃げております(笑)。・・・で動かしてみたらすこぶる調子がいい!というか、このニクロム線を取り付ける作業、予想以上に大変で・・・短くする作業は挫折しちゃいました!「これでいいや!」って感じ。いやはや適当だな(笑)。

まあ、長い分には温度が抑えられる理屈だし、曲げた部分から万一切れても1150円だもんね!多分、おNewのニクロムなので最低でも2-3年は持つでしょう・・・あくまで勘ですが。

結局、こういうザクッとした作業が通用するのもバイメタルのサーモスタットみたいなアナログでシンプルな機構ゆえですよね。これIHヒーターみたいなハイテクだと「これくらいでいいだろう」なんてパーツに交換したらまず動かないでしょう・・・それ以前に部品が外れないだろうな。

楽しい修理に達成感を覚えつつも、この作業っていつも「今の工業製品って何か変だよな?」というところに入っちゃうんですよね。不思議なものです。

シンプルなものはシンプルなままでいいんだ!そういう社会にしたいなぁ・・・なーんて、思っちゃう・・・まあ、日曜修理で社会状況に切り込むなんて大げさかな(笑)。いずれにしても、直ってめでたし、めでたしなのでありました。

ありがとうございました!